(8)『“健康住宅”のウソ・ホント』 ~序章 プロと称する設計事務所や工務店の甘い言葉に惑わされるな~(P37~43)
当社代表取締役 杉山義博の「家づくりの想い」が1冊の本となり、2018年7月に幻冬舎より発売されました。その中身を少しずつご紹介させていただきます。(amazonからもお求めいただけます)
~序章~ 健康住宅はウソだらけ!? “家” に殺される日本人の現実
プロと称する設計事務所や工務店の甘い言葉に惑わされるな
住む人の健康を担うという責任を持って、私たち工務店やハウスメーカーはお客様と向き合うべきだと、私は長年にわたり声を大にして主張してきました。
しかし、私が家づくりの現場で感じたのは、「高気密・高断熱で快適です」と口ではいっておきながら、まったく真逆の家を建築してお客様に引き渡す工務店やハウスメーカーが非常に多いことです。
「新築時はまだ骨組みが暖まっていないので、寒いかもしれません。でも、住んでいるうちに暖かくなります」
こういったハウスメーカーの言葉を信じて住んでみたものの、何年経ってもずっと寒いままだったという人は、大勢います。
家というものは、住み始めてから長い時間が経過しないと、本当の良し悪しは分かりません。「当社は100年経っても大丈夫な家を保証します!」などと口ではうまいことをいっていても、答え合わせができる頃にはその施工会社がなくなっている可能性は非常に高いのです。
2011年にLIXIL住宅研究所フィアスホームカンパニーが既婚女性110名を対象に実施した「リフォームに関するアンケート調査」によると、現在感じている住まいの困りごとは、1位が「窓の結露がひどい」(44%)、2位が「家の中が寒い」(43%)と、ほぼ半数の人が結露や寒さに悩まされているという結果になりました。
このアンケートに答えた人たちが、どの程度の割合で高気密・高断熱住宅に住んでいるかは分かりませんが、この結果から日本家屋の質の悪さが十分に分かりました。
また実際に、多くの人が高気密・高断熱住宅を手に入れたにもかかわらず、「寒い冬の夜はぐっすりと熟睡することができない」「床が冷たくて、素足で歩くことができない」「朝起きるのが辛い」「家の中でもダウンを着るなど厚着をしている」といった不満を抱えています。
今から8年ほど前、マイホームの建築を希望されて私の会社を訪れたお客様(Mさん)がいました。
私の会社の体感モデルハウス「木楽」(2008年竣工)をご案内したのですが、すでに他の設計事務所で図面を作成したとのこと。
競争入札で工務店を決めるということで、私の会社にも参加してほしいと促されましたが、その図面は私の目指す住まいづくりの工法とはかけ離れていたので、お断りせざるを得ませんでした。
その後、ほかの地元の工務店に家づくりをお願いしたというMさんから、体験談が送られてきました(一部、読みやすいように文章を若干改変しています)。
「(前略)正直、お話を伺っていた時は半信半疑というか、自分自身の中で『他の工務店でも同じようなことができるのでは?』という根拠のない期待がありました。また、設計事務所の先生や工務店の方がおっしゃった、『現在では、どの家も高気密・高断熱で真冬の寒さも、真夏の暑さも昔とは比べ物にならないくらい快適ですよ』という言葉を信じてしまいました。
確かに二重窓なので、昔と比べれば快適なのでしょうが、快適とはほど遠い現実が待っておりました。
冬の現在は入浴30分前からの浴室暖房、入浴後の居間でのくつろぎには靴下と毛布はかかせませんし、朝の暖房タイマーをつけ忘れた時には吐く息が白くなります。
また、玄関から居間につながる扉は度重なる寒暖の差から反ってしまい、すでにきしみ音が発生しております。室内の壁紙もクラック(裂け目)が入り、貼り替えなくてはいけない状態です。
工務店いわく、木材は生き物なのでしかたがないとのことですが、寝室がある2階の夏場に至っては、就寝30分前から冷房をつけないと眠れないほどです。施工した工務店が悪いわけではなく、すべての『高気密・高断熱』といわれる住宅にお住まいの方は、今の私と同じ感想だと思います。くどいようですが、高気密・高断熱で二重窓の最新エコ住宅だそうです。
御社の体感モデルハウス『木楽』へ行かなかったとしたら、ストレートに『快適ですよ』と答えると思います。
私がいうのもなんですが、御社で体感したあの心地良さは本当に別ものでした。たとえがよくないかもしれませんが扇風機とエアコン、電気ストーブと暖炉との違いのようなものだと、いまさらながら納得しております。
公的機関主導で高気密・高断熱の定義をしっかり区別するべきではないかと感じております。
どうぞこれからも住宅建設をお考え中の皆様に、より良い住宅のご提案をなさってください」
Mさんは、いわゆる「高気密・高断熱の住まいの理想と現実」がどのようなものかを伝えたいという思いで、貴重な体験談を綴ってくださいました。
Mさんの体験談にあったように、高気密・高断熱をうたった家にも、快適とはいい難い家がたくさんあり、ヒートショック現象や熱中症など、さまざまな健康被害を受ける可能性が潜んでいます。
家は一生ものの買い物です。しかし、高額な住宅ローンを組んで建てたせっかくの家が、健康被害を引き起こす原因だとしたら、その絶望感は計り知れません。