(17)『“健康住宅”のウソ・ホント』 ~第2章 室内の空気が汚染されたまま滞留し 体調不良を引き起こす~(P82~86)
当社代表取締役 杉山義博の「家づくりの想い」が1冊の本となり、2018年7月に幻冬舎より発売されました。その中身を少しずつご紹介させていただきます。(amazonからもお求めいただけます)
~第2章~
ウ ソ ②:24 時間換気システムがあれば、ぜんそく・アレルギーは防げる
ホント②:室内に汚れた空気がよどみ、ぜんそく・アレルギーを誘発
通常の換気システムでは空気は入れかわらない
室内における二酸化炭素濃度は、普段あまり意識されないものですが、私たちの生活にさまざまな弊害をもたらします。
人が呼吸すると、二酸化炭素が排出されます。室内に人がいるだけで、酸素濃度は徐々に減少していき、逆に二酸化炭素は徐々に増加していきます。
通常の大気での二酸化炭素濃度は300~400ppm(パーツ・パー・ミリオン)程度ですが、市街地の外気では400~600ppm程度とされています。ビル管理法で定められた二酸化炭素の基準濃度(1000ppm)を超すとあくびが出て眠気を催したり、空気が悪いと感じたり、集中力や思考力にも影響を及ぼします。
二酸化炭素濃度が2000ppmを超えてしまうと、頭痛や倦怠感、注意力の欠如、心拍数の増加、吐き気などの諸症状が発生し、あきらかに問題がある状況となります。健康のためには、どのような状況下でも1000ppm以下を厳守すべきだと主張する専門家もいます。
大手ハウスメーカーによって建てられた高気密・高断熱住宅に住んでいる家族を対象に、夜中の二酸化炭素の濃度の変化を観察する調査があり、そこから驚くべき結果が明らかになっています。
第3種換気を取り入れている家では、家族4人が寝息を立てている6畳の寝室の二酸化炭素はなんと3000ppmを超えており、きわめて不十分な換気状態であることが分かりました。
また、第1種換気を取り入れている家でも、家族3人が寝ている寝室では2000ppmを超えてしまい、十分な換気ができていないことを示す結果でした。
二酸化炭素の濃度が高い部屋に長時間とどまると、さまざまな体調不良の引き金になります。
日本ではほとんど議論されていませんが、健康・福祉の先進国であるスウェーデンでは、ビルばかりでなく一般の住宅においても、人が暮らしている状態で二酸化炭素濃度が1000ppm以下になっているかどうかは、非常に重要な議論の一つになっています。
くり返しますが、現行の換気システムは、人の呼気を含めた総合的な空気浄化を考えたシステムではないため、二酸化炭素の排出が十分にできません。
基準の換気量はクリアできていても、すべての空気が入れかわるわけではないので、どうしても空気の流れに「よどみ」ができてしまうのです。
日本は世界でも数少ない「緑化面積70%以上」を達成している緑あふれる国です。それゆえ、多くの人は空気に対して鈍感な部分があるのではないでしょうか。
特にシックハウスやハウスダストが大きな問題となっている今、家の中のよどんだ空気を入れ替える「換気」には敏感にならなければなりません。空気がよどんでしまうと、二酸化炭素濃度だけでなく、身体の不調をまねくさまざまな問題が発生してしまいます。
それは、空気中を漂うホコリやカビ、ダニなどよる被害です。これらは、正しく換気ができていない、よどんだ空気や湿気の多い場所を好んでいます。以降で詳しく説明しますが、正しく換気ができないシステムの家で暮らし続けたら、本当に健康的な生活を送ることから遠ざかってしまうことは間違いありません。
[図表11]就寝中の二酸化炭素(CO2)濃度変化
親子4人が6畳の寝室で寝ている時の二酸化炭素の濃度変化。睡眠中、高濃度の3000ppm に達していることが分かる。
親子3人が6畳の寝室で寝ている時の二酸化炭素の濃度変化。こちらも2000ppm にまで達している。