(11)『“健康住宅”のウソ・ホント』 ~第1章 家をすっぽり断熱する「外断熱」を基本に 内断熱で補強する②~(P52~57)
当社代表取締役 杉山義博の「家づくりの想い」が1冊の本となり、2018年7月に幻冬舎より発売されました。その中身を少しずつご紹介させていただきます。(amazonからもお求めいただけます)
~第1章~
ウ ソ ①:高気密・高断熱の家ならヒートショックは防げる
ホント①:やはり室内の温度差が大きく、ヒートショックは起こる
家をすっぽり断熱する「外断熱」を基本に 内断熱で補強する②
家の断熱には、「内断熱」と「外断熱」の2種類があります。
内断熱(充塡断熱)は、柱と柱の間に断熱材を入れる断熱工法のことで、日本で広く普及しています。
内断熱のメリットは、何よりも施工コストが安いことです。
ただし、柱と柱の間に断熱材を入れ込んでいく工法のため、柱のあるところは断熱が途切れてしまい、そこから熱が漏れ、断熱欠損になります。
また、工務店やハウスメーカーの施工技術が低レベルで、入れ込んだ断熱材がすき間だらけの場合は断熱性能が極端に下がりますし(断熱欠陥)、家の内外の温度差によって結露が生じやすくなり、家の寿命が短くなってしまいがちです。
職業柄、私は新築の建築現場を見かけると、どのような施工を行っているのか見るクセがあります。その際、断熱材がすき間だらけだったり、ヒートブリッジ(熱橋・断熱性能が劣る部位)だらけで断熱性能に問題があったりして、がく然とします。つくり手の知識と技術を疑う施工があまりにも多く見受けられるのです。
断熱材がすき間なくしっかりと充塡されているかどうかは、工務店やハウスメーカーの腕と頭次第です。同じ断熱材を使っていても、しっかり充塡されていなければ性能が著しく劣ってしまいます。
一方で外断熱(外張り断熱)とは、柱の外側に断熱材を張ることです。家を板状の断熱材ですっぽりと覆うことで、外断熱による魔法瓶のような効果を生み出し、熱が逃げにくく、同時に入りにくくなります。外断熱は、基礎や梁、柱、屋根のすべての構造材が断熱材で包み込まれるので、日光の輻射熱や放射冷却の影響が少なく、外気から遮断されて一定の室温を保てるのが特徴です。部屋ごとの温度差が生まれにくく、結露の心配も少なくなります。
また、小屋裏も自由に使えるのでロフトや収納に活用できたり、吹き抜けにして天井を高くしたりするなど、利便性も高くなります。
ただし、外断熱はまだ国内では十分に普及しておらず、施工コストが高いことが難点です。
[図表5]内断熱と外断熱の違い
【充塡断熱(木造)】
・継ぎはぎですき間だらけ
・基礎と縁の下は冷たい
【外張り断熱(木造)】
・すき間なく覆える
・基礎を蓄熱体として使える
断熱性能や気密性能でいうと、外断熱のほうが圧倒的に優れています。床下から小屋裏まで、快適な環境を年中保つことができるためです。
しかも、外断熱の家は軀体(くたい=基礎や壁、柱など、建物の構造を支える骨組み)の中がすっぽりと断熱材に包まれて保護されているので、給湯給水配管や電気配線などが外気温や風雨などの影響を受けることがないというメリットがあります。
家の配線の耐用年数は一般的に30年といわれており、それ以上住むには途中で配線をすべて取りかえなければなりませんが、外断熱で保護されることにより、その心配が少なくなります。
ただし、内断熱にせよ外断熱にせよ、施工がしっかりしていないと、断熱材の性能は著しく悪くなり、断熱の意味がなくなります。そして、残念ながら知識や技術に乏しい施工業者は、決して少なくありません。
断熱材は外側から見ることができないので、工務店やハウスメーカーの選別は入念に行う必要があります。くれぐれも「全国CMを流している有名な大手住宅メーカーだから安心」といった安直な理由で依頼先を決めないでください。
また、ニセモノの「外断熱」には注意が必要です。
ひとことで外断熱の住まいといっても、実は家の基礎の部分は内断熱になっていたり、屋根部分ではなく2階の天井裏で断熱をしていたりと、外断熱の定義から外れる場合が多くありますので、事前に断熱材の使用部位をよく確認しなければいけません。
信頼できる依頼先かどうかを見分けるための一つの目安として、家の性能をあらわす「C値」と「UA値」を示してくれるかどうかを確認する方法があります。
もし工務店やハウスメーカーの担当者が「C値? UA値? 何のことですか?」といってきたら要注意です。
C値とは「相当すき間面積(㎠/㎡)」のことで、家の気密性能(すき間がどのくらいあるか)を示す指標です。家全体にあるすき間面積(㎠ )を延べ床面積(㎡ )で割ったもので、この数値が0に近いほどすき間が小さく、気密性が高いことを意味します。
床面積1㎡あたり、C値が5・0以下の住宅を「気密住宅」と呼びます。次世代省エネルギー基準により、寒冷地である断熱地域区分のⅠ、Ⅱ地域(北海道)ではC値2・0以下、その他の地域ではC値5・0以下となるように規定されています。
UA値とは「外皮平均熱貫流率(W/㎡・K)」ともいい、住宅の断熱性能を数値で表したものです。建物内外の温度差が1℃のときに外部に触れている部位ごとの熱損失量の合計を外皮面積の合計で割った値のことをいいます。この値が小さければ小さいほど断熱性能が高く、熱が逃げにくい建物であることを意味します。
いくらすばらしいデザインで高価な材料を使った家でも、C値とUA値が高ければ、夏暑く冬寒い住みづらい家である可能性が高いといえるでしょう。
ちなみに、私の会社ではC値は「0・3以下」、UA値は「0・5以下」を実現するべく、細かいところまで丁寧な施工を行っています。