(10)『“健康住宅”のウソ・ホント』 ~第1章 家をすっぽり断熱する「外断熱」を基本に 内断熱で補強する①~(P48~51)
当社代表取締役 杉山義博の「家づくりの想い」が1冊の本となり、2018年7月に幻冬舎より発売されました。その中身を少しずつご紹介させていただきます。(amazonからもお求めいただけます)
~第1章~
ウ ソ ①:高気密・高断熱の家ならヒートショックは防げる
ホント①:やはり室内の温度差が大きく、ヒートショックは起こる
家をすっぽり断熱する「外断熱」を基本に 内断熱で補強する①
場所ごとの室温の違いをなくし、ヒートショックを起こさない「体にやさしい家」をつくる上で大事になるのが「断熱」です。
断熱とは、簡単にいうと、床や壁、屋根から伝わる熱の流れをさえぎり、室内に寒さや暑さの影響を伝わりにくくすることです。
断熱されていない家は、例えば夏なら強い日差しが屋根にあたることで屋根面の温度が80~100℃にまで上がり、小屋裏の温度も60~80℃に上がるので、まさにサウナ状態で窓を開けてもまったく涼しくなりません。
断熱性能が高まれば、冷暖房費の節約になりますし、より快適に過ごすことができます。
適した場所に適した断熱材を使って家の熱伝導率を低くすることで、夏涼しく、冬暖かい家をつくることができます。
一般的に、内部に空気をたくさん閉じこめたものほど、熱を伝えにくくする性質があります。家を建てる時に使われている断熱材は、この空気の断熱性能を利用したものが多いのです。
ロックウールやグラスウール、セルローズファイバーなどの「繊維系断熱材」は、繊維のすき間に乾燥した空気を蓄えています。
一方で、ポリスチレンフォームやウレタンフォームなどの「発泡系断熱材」は、気泡の中に閉じ込めた乾燥空気の断熱性能を利用しています。
それぞれの材料ごとに長所・短所がありますが、経年劣化の起きにくいものを選ぶことが最も重要です。
家の断熱性能をいっそう高めるためには、「より断熱性能の高い断熱材を使用する」「断熱材を厚くする」「断熱材と断熱材の間にすき間をつくらないように施工する」「断熱材の経年劣化を小さくする」といった条件をクリアする必要があります。
これらの条件をクリアしていくほど断熱性能は高まりますが、それに比例してイニシャルコスト(工事費)も高くなります。
家を建てる上で予算は大切ですが、予算に気を取られすぎて安さだけを追求すると、その後の住みやすさや家族の健康にまで大きく影響することに、注意しておかなければいけません。
[図表4]断熱材の種類
種類 | 特徴 |
無機繊維系 (ロックウールやグラスウール) |
耐熱性に優れ、有毒ガスが発生しない。防音性能に優れ、安価で軽い。シロアリの被害を受けにくい。断熱材の脱落が起きないよう施工に注意する必要がある。吸湿しない措置をとる。気密施工に難あり。直接触れるとかゆみなどを伴う。 |
木質繊維系 (セルローズファイバー) |
湿度調整をしてくれる。吸音効果がある。製造エネルギーが非常に小さい。難燃処理を施すことにより延焼を防ぎ有毒ガスの発生がない。グラスウールより価格が高い。断熱材の脱落が起きないよう施工に注意する必要がある。気密施工に難あり。 |
木質繊維系 (羊毛) |
湿度調整をしてくれる。吸音効果がある。劣化しにくい。シロアリの被害を受けにくい。海外からの輸入が多く輸送コストがかかり高価。気密施工に難あり。 |
発泡プラスチック系 (ビーズ法ポリスチレンフォーム) |
断熱性に優れる。水や湿気を通しやすい。加工性・施工性に優れている。繊維系断熱材に比べて高価。熱に弱いので難燃処理で対処する。 |
発泡プラスチック系 (押し出し法ポリスチレンフォーム) |
断熱性に優れる。水に強く上棟中などに濡れても性能の低下を起こしにくい。加工性・施工性に優れている。繊維系断熱材に比べて高価。熱に弱い。気密施工しやすい。 |
発泡プラスチック系 (硬質ウレタンフォーム) |
断熱性に優れる。硬いので衝撃に強い。繊維系断熱材に比べて高価。加工性・施工性に優れている。性能低下が大きい。 |
発泡プラスチック系 (フェノールフォーム) |
断熱性が非常に高い。発泡系断熱材の中では防火性に優れる。経年劣化が小さい。繊維系断熱材に比べて高価。硬く割れやすい。吸水(吸湿)性がある。 |
現場発泡系 (発泡ウレタン) |
現場充塡、断熱補強に優れている。 |
真空断熱材系 (減圧密封されたグラスウールなど) |
断熱材の周囲を真空状態にし、気体による熱伝導を限りなくゼロに近づけることで、高い断熱効果を発揮する。厚さが薄いため省スペースになる。穴が開くなど、真空状態が保てなくなってしまうと断熱性能は急速に低下する。 |