設計のワンポイントアドバイス~太陽光発電システム・蓄電池~
設備機器による災害対策の一環として、太陽光発電システム・蓄電池について考えてみたいと思います。
太陽光発電システムを住まいに導入検討する際に、悩むポイントとして下記が挙げられるのではないでしょうか?
①設置費用 ②耐久年数 ③ランニングコスト ④売電価格の下落
太陽光発電にはこれらのようなデメリットが多くあると言われていますが、それ以上にメリットもあります。
まず「太陽光」について考えてみたいと思います。太陽光は再生可能エネルギーに分類され、エネルギーに変わる際に有害物質を発しません。かつ、プランクトン化石とは異なり、自然界に常に存在しているエネルギーなので枯渇する恐れもありません。
次に「太陽光発電システム」について考えてみます。太陽光のエネルギーを電力に変えるため、太陽電池を用います。この太陽電池の集合体が太陽光パネルです。太陽光パネルに太陽光が当たると半導体の電子が動き、電気を発電します。発電量が10kWを超すか否かで、産業用又は住宅用太陽光発電に区分されます。共に光熱費の節約につながりますが、住宅用は主に自然災害への備え、産業用は投資等の営利目的となります。
設置費用は、商品とその発電容量により違いが生じます。商品選択の際には、FIT制度(固定価格買取制度)による売電収入も考慮に入れられると思いますが、残念ながら売電価格は年々下落しています。しかしながら、太陽光発電システム自体の低価格化・施工技術の進歩による低コスト化により、初期投資にかかる費用は年々低下しています。目安とはなりますが、余剰電力の買取が採決された2009年の設置費用は1kWあたり50~60万円程度でしたが、2020年では20~30万円程度と約1/2の価格になっています。
再生可能エネルギー発電促進賦課金の導入により、電力会社は電気料金の値上げを行い、消費増税による影響もあり、家庭における光熱費の負担は大きくなっていますが、これを太陽光発電で賄うことができます。さらに、太陽光発電システムが発電した電気で、使わずに余った分を蓄電池に貯めておけば電力をより有効活用できます。ヒートポンプ技術を利用し、電気でお湯を沸かすエコキュートと蓄電池を連携させれば、夜間においてもその電力を用いることができます。そして自然災害が多い日本では、停電時でも蓄電池により電気が使えることはかなりの強みになります。
このように、太陽光発電・蓄電池・エコキュートと3つのシステムを連携することで、日中貯めた電力を夜間に活用でき、災害時でも電化製品を使えるなど、効率的で且つ安心して暮らすことができます。
最後に、環境問題から太陽光発電システムの導入を考えてみたいと思います。私たちの生活に必要不可欠な資源である石油や石灰のような化石燃料は、再生不可能エネルギーであり、エネルギーに変わる過程で二酸化炭素や窒素化合物などの環境汚染物質を排出します。そして、このことが異常気象や海面上昇などの環境問題の原因の1つになっています。
2019年12月に行われた「COP25」では、日本の石灰使用に対する非難が集まり、温室効果ガス削減に向けた対策をしていかなければならないと指摘されました。そして今年から、世界の平均気温上昇を産業革命以前に比べて2℃より低く保ち、1.5℃に抑えることを長期目標とした「パリ協定」が始まっています。地球の未来について考えた時、国や企業による努力だけでなく、個人レベルでの対策が必要となることは言うまでもありません。
社会貢献・電力コスト軽減・災害対策の観点からも、太陽光発電システムや蓄電池は導入時には費用がかかりますが、ご一考いただく価値があると思います。
(マルシチホーム家づくり通信「concierge 2020年 春号」掲載)