災害に備える~建物への対策~
敷地・間取りへの対策ができたら、プラスアルファの安心を得るための建物への対策を検討します。
<耐震等級>
地震に強い家を検討する際に、「耐震等級」という言葉を聞くことがあるかもしれません。
耐震等級とは、建物の強さ・強度の指針であり、「住宅の品質確保の促進等に関する法律」(略称:品確法)によって定められている住宅性能表示の1つです。建物を建てる上での法律である「建築基準法」とは異なります。なお、制度は任意となりますので、表示がなくても耐震性が低いわけではありません。
「建築基準法」には、最低限の耐震性能を確保するための耐震基準が定められており、過去の震災を機に段階的に改正が行われていますので、耐震基準も高まってきています。この耐震基準は、建築物の規模・工法・素材などに応じて、守るべき項目ごとに基準が定められています。そのため、家を建てるには、最低限これらの基準をすべてクリアする必要があります。
一方、「品確法」で定められている耐震等級では、建物の構造による優劣はありません。壁量・接合部・基礎などについて、より詳細な検討項目があります。現在、耐震等級は3つの段階が設けられており、数字が大きくなるほど耐震性能が高く、ベースとなるのが「建築基準法」で定められたレベルである耐震等級1となります。
・耐震等級1:数百年に一度発生する地震の地震力に対して倒壊・崩壊せず、数十年に一度発生する地震の地震力に対して損傷しない程度(阪神・淡路大震災相当の地震でも倒壊しない程度とされる「建築基準法」で定められたレベル)
・耐震等級2:等級1で想定される1.25倍の地震が起きても倒壊・崩壊しない程度(病院や避難所となる建物の耐震程度とされるレベル)
・耐震等級3:等級1で想定される1.5倍の地震が起きても倒壊・崩壊しない程度(消防署や警察署等の防災の拠点となる建物の耐震レベル)
<地震対策>
地震対策の工法として、建物の剛性を高める「耐震工法」、ダンパーなどで地震の揺れを吸収する「制震工法」、建物に直接揺れを伝えない「免震工法」があります。そのほかに、揺れを感じると瞬時に宙に浮き揺れを断つ「断震工法」があります。各工法によって、地震に対する考え方は全く異なります。
【地震対策の4つの工法】
地震の揺れから身を守るため、各工法の違いについて十分に理解し、敷地や建物の形状に合った工法を選択することが大切です。
「マルシチの家」と相性が良いとして、お勧めしている工法がいくつかありますので、ご紹介したいと思います。
①ミューダム(アイディールブレーン株式会社)
世界初の金属流動を利用した木造住宅用の制震装置です。刀と鞘のような二重構造の鋼管がスライドする筋かい型ダンパーで、地震が発生すると、スライド部分でアルミと鋼材の「金属流動」が起こり、地震エネルギーは熱エネルギーに変換され揺れが低減します。金属流動とは、異なる金属同士が摩擦を受けながら、摩耗することなく一方が軟化し柔らかく動き始める現象のことです。
繰り返しの地震にも強く、揺れ幅を最大で80%低減します。
②ブレースリー(日軽金アクト株式会社)
アルミ製の筋かいに履歴ダンパーと呼ばれるアルミ押出形材を内蔵した、木造住宅用の制震装置です。繰返しの地震にも強く、耐久性・耐食性に優れるアルミダンパーの塑性変形によって生じるエネルギー吸収機能により安定した減衰性能を発揮し、地震の揺れ幅を最大で73%軽減します。
③TIP構法(日本TIP建築協会)
TIP構法は構造力学や物理学等、自然の法則を有効に活用した建築構法で、日本で初めて大学機関によって開発された構法です。幅の広い筋かいと補強ガセットを使用することで、圧縮にも引張にも効果があります。下地板を斜めにすることで、縦揺れにも有効であると実証されています。従来の筋交いを使用する耐震工法と比べ、耐震強度は2倍以上となります。
④AIR断震(株式会社三誠AIR断震システム)
空気の力で家を空中に浮かせて地震の揺れから断つ、最新の地震対策装置です。地震が発生した時、地面は揺れますが、まったく地面と接していない浮いた家なら揺れません。その理屈を具現化したのがこのシステムです。
地震の揺れを感知すると、約1秒程度でエアータンクに貯蔵してある空気を人工地盤と基礎の間に送り込み、建物全体を浮上させます。建物と揺れている面が離れる事で、建物自体は地震の影響をほとんど受けません。家の倒壊はもちろん、家具の横倒しなどによる被害も、未然に防ぎ自分の身や最愛の家族を守ることができます。
地震後は、コンプレッサーにより自動でエアータンクに空気が補充されるので、お手入れやメンテナンスの煩雑な作業がありません。また、一般的な免震システムに比べ安価に安全の地震対策を設置することができます。
(マルシチホーム家づくり通信「concierge 2020年 春号」掲載)