断熱材を考える
快適な住まいをつくる上で重要なものの1つに、断熱材の「工法」と「材料」が挙げられます。
熱の伝わりやすさは素材によって大きく異なります。一般に重たいものほど熱を伝えやすいです。例えば、重たい素材である金属やコンクリートは、伝導によって熱を大量に伝えてしまいます。これに対して軽い物質の代表である空気は、熱を伝えにくい性質があります。このため内部に空気をたくさん含んだ物質ほど、熱を伝えにくいといえます。
断熱材は気体の断熱性能を利用しています。繊維系断熱材は繊維の隙間に空気を保持し、発泡系断熱材は気泡の中に閉じ込めた空気の断熱性能を利用しています。同様に、窓のガラスでもペアガラスとかトリプルガラスにすることで断熱の性能が高まります。断熱性能が高まれば冷暖房費の節約になりますし、より快適に過ごす事が出来ます。
断熱性能を高めるためには・・・?
*断熱性能の高い材料を使用すること
*さらに材料を厚くすること
*断熱層が連続して施工されていること。
*断熱材の経年劣化が小さいこと
これらをクリアしていくほど、イニシャルコスト(工事費)も比例して高くなります。
次に断熱材の素材について考えてみます。
断熱材を素材で分類するならば、繊維系とプラスチック系の2つに大別できます。
繊維系: 微細な繊維の隙間に空気を保持するもの
発泡系: 発泡スチロールのように細かな独立した気泡の中に空気を閉じ込めてあるもの
繊維系をさらに分けると、
①ガラス繊維のような無機繊維系
ロックウール(玄武岩などを溶かして繊維状にしたもの)やグラスウール(ガラスの短繊維を綿状にしたもの)など
②天然の木質繊維系
セルローズファイバー(天然パルプに加えて古新聞などを主原料にして水で練ったものを吹き付ける)、羊毛、炭化発泡コルクなど
形状による分類をすると、フェルト状、ボード状、ばら状、現場発泡などに分れます。
断熱材の断熱性能は「熱伝導率」の数値で示されます。熱伝導率とは物の熱の伝わり易さを表す値で、この値が大きいほど熱が伝わり易く、小さいほど伝わりにくいのです。単位はW/(m・K)。これは断熱材両面の温度差が1℃で、材料の厚さが1mの時に通過する熱量を表します。断熱材が厚いほど熱が伝わりにくいのですが、同じ種類でも密度によっても性能が変わります。厚くても密度が小さければ断熱性能は劣ることになります。
断熱材の特徴を簡単にまとめると以下のようになります。
無機繊維系 (ロックウールやグラスウール)
耐熱性に優れている。有毒ガスも発生しません。防音性能にも優れています。安価で軽い。シロアリの被害を受けにくい。断熱材の脱落が起きないよう施行に注意する必要がある。吸湿しない措置をとる。気密施工に難あり。直接触れるとかゆみなどを伴う。
木質繊維系 (セルローズファイバー)
湿度調整をしてくれる。吸音効果あります。製造エネルギーが非常に小さい。難燃処理を施すことにより延焼を防ぎ有毒ガスの発生もありません。グラスウールより値段が高い。断熱材の脱落が起きないよう施行に注意する必要がある。気密施工に難あり。
木質繊維系 (羊毛)
湿度調整をしてくれる。吸音効果あります。劣化しにくい。シロアリの被害を受けにくい。海外からの輸入が多く輸送コストがかかり高価。気密施工に難あり。
発泡プラスチック系 (ビーズ法ポリスチレンフォーム)
断熱性に優れる。水や湿気に強い。加工性・施工性に優れている。繊維系断熱材に比べて高価。熱に弱い。(難燃処理で対処)気密施工しやすい。
発泡プラスチック系 (押し出し法ポリスチレンフォーム)
断熱性に優れる。水に強く上棟中などに濡れても性能の低下など起こしにくい。加工性・施工性に優れている。繊維系断熱材に比べて高価。熱に弱い。(難燃処理で対処)延焼はしない。気密施工しやすい。
発泡プラスチック系 (硬質ウレタンフォーム)
断熱性に優れる。硬いので衝撃に強い反面カッターなのでカットするのが容易でない。繊維系断熱材に比べて高価。水や湿気に強い。加工性・施工性に優れている。性能低下が大きい。
発泡プラスチック系 (フェノールフォーム)
断熱性が非常に高い。発泡系断熱材の中では防火性に優れる。経年劣化が小さい。繊維系断熱材に比べて高価。硬く割れやすい。湿気に難がある。
現場発泡系 (発泡ウレタン)
現場充填する為、気密性が高く遮音性能も優れている。経年劣化が少ない。防火性能が弱い。
それぞれの材料に長所・短所がありますが、材料で注意したいのは経年劣化の起きにくいものを選ぶことが重要です。そして充填工法、外張り工法の違いが、永く快適に住み続けられる住まいになるかどうかの大切な要素となります。