愛猫と暮らす ~3次元で考える~
ひと昔前、猫は昼間は外で遊び、食事のタイミングや寝る時には家に帰ってくる「半外猫」がたくさんいました。しかし、現在では猫の交通事故や伝染病を予防するために「完全室内飼い」が推奨されており、飼い猫の生活実態は大きく変わってきています。しかし、猫をただ部屋の中に入れておけば良いというわけではありません。猫のニーズを満たす空間でなければ、ストレスから問題行動を起こし、猫も一緒に住む家族も不満足なものとなってしまいます。そのため、猫ファーストの住まいづくりを心掛けることが大切なのです。
愛猫家住宅とは~猫が居心地のよい住まい~
猫は適応能力が高い動物ですが、小さな不満が積み重なると、トイレ以外の場所で排泄したり、人に攻撃するなどの問題行動を起こすケースが多々あります。そのため、猫が楽しく暮らせる、猫にとって居心地のよい工夫が必要です。
3次元で考える猫との暮らし
家の中で過ごす猫にとって、家の中を自由に動き回れることは運動不足の解消になります。しかし、猫は平面で暮らす動物ではありません。猫の場合は空間を立体でとらえ、飽きずに運動ができるようにする工夫が大切です。
<高い所から下を覗ける場所を設ける>
猫は高い場所を好みます。人と暮らすイエネコの先祖であると言われている「リビアヤマネコ」は森林で暮らし、外敵から身を守るために木の上で多くの時間を過ごしていました。人間にとって、高いところは怖くて危ないというイメージがありますが、猫にとってはその逆。本能として高い所を好み、高い所の方が落ち着きます。そのため、横に広いスペースよりも縦に動ける空間を好むのです。
高すぎる場所はいけませんが、できれば猫のために高い所を用意し、下を眺められるようにしましょう。
<キャットウォーク&キャットステップ>
「キャットウォーク」は高い場所にある猫の通り道のこと。猫は床を走るだけでなく、上下や交差する動きも大好きなので、猫が視線の変化を楽しめる「キャットステップ」も合わせて取り付ければ、猫は自由に遊び回れます。猫が楽しそうにキャットステップを登り、キャットウォークでくつろぐ姿を眺めることは、飼い主の至福のひと時につながるのではないでしょうか。
上下運動がキャットステップ&ウォークの大切なポイントですが、掃除ができない高さにまで計画してしまうとお手入れが大変なので注意が必要です。吹抜けの天井近くにキャットウォークを取り付けてしまったために、猫の汚物が下に垂れてしまい、長いハシゴを使わないと掃除ができなかったという失敗例もあります。人の手が届く範囲までにとどめておくことが、お手入れの面でも、猫が転落した場合の安全面から考えても安心です。
<段階的な高さでリラックススペースを設ける>
猫は高い場所が好きであると紹介させていただきました。しかし、人間同様に猫にも個体差があります。一般的に立場が強い猫は低い所を好み、立場が弱い猫は高い所を好むようです。特に多頭飼いをしている場合、この違いは明確に見えてくるようです。どの猫もゆっくりとリラックスできるスペースを事前に検討しておくことが必要です。3つくらいの高さに区切って、それぞれが休めるスペースを作れると良いでしょう。
・低い場所:床の上、猫用ベッドなど
・少し高い場所:机の上、猫用階段、キャットタワーなど
・高い場所:キャットタワー、ブリッジなど
<隠れんぼスペース>
猫は身を隠せるスペースが大好きです。段ボール箱の中や、物陰、椅子や机の下など少し薄暗くて狭い場所を気に入る猫も多くいます。猫はそういった場所を自ら探して寛ぐので、それほど気にしすぎる必要もありませんが、殺風景な部屋だと、身を隠すことができず、ストレスが溜まってしまうこともあります。ある程度隠れられるスペースがあると、猫にとっては嬉しい空間となります。