(2)『“健康住宅”のウソ・ホント』 ~序章 ニセモノの「健康住宅」にだまされるな~(P14~17)
当社代表取締役 杉山義博の「家づくりの想い」が1冊の本となり、2018年7月に幻冬舎より発売されました。その中身を少しずつご紹介させていただきます。(amazonからもお求めいただけます)
~序章~ 健康住宅はウソだらけ!? “家” に殺される日本人の現実
ニセモノの「健康住宅」にだまされるな
近年、多くの工務店やハウスメーカーが「健康住宅」を売りに住宅を販売するようになりました。
健康住宅というと、以前は木材や漆しつ喰くいなどの自然素材を使った家というイメージがありましたが、最近では多くの場合「高気密・高断熱住宅」を意味しています。
高気密・高断熱住宅とは、すき間風が入ってこない高い気密性と、断熱材や特殊な工法による高い断熱性能によって、室温が屋外の影響を受けないようにつくられた家のことです。
高気密・高断熱住宅は、夏は涼しく、冬は暖かく快適で、省エネルギー効果があって耐久性にも優れています。日本においては、もともと寒さに厳しい北海道から広まった家づくりの方法で、たとえ外がマイナス10℃以下の極寒でも、快適な室温を保つことができます。
ハウスメーカーや工務店は、「暑さや寒さを感じず、一年を通じて快適です」「冬、朝起きるのがつらくなくなります」「ハウスダストやヒートショックに悩まされず、家族みんなが健康的に過ごすことができます」「断熱性能が高いので光熱費が下がり、お財布にもやさしい住宅です」などと、高気密・高断熱住宅のメリットをさかんに押し出しています。
もちろんこれらは、高気密・高断熱住宅ならではのすばらしいポイントです。
しかし、残念ながら日本の高気密・高断熱住宅の歴史はまだ浅く、基準を満たしていないニセモノも数多く存在します。
肝心のハウスメーカーや工務店も、とにかく売ってしまえばいいという意識が先立つばかりに、自社の住まいの特徴すら分かっていないまま適当な営業トークをする悪質な社員がいるところも決して少なくありません。
家を買おうとする人々にとっては、目の前の高気密・高断熱住宅がニセモノか本物かを判別するのは至難の業です。住まいのプロがいうのだからちゃんとしているんだろうと、すすめられるがままに購入してしまうケースも多々あります。
こうしてニセモノの高気密・高断熱住宅を買ってしまった人は、住んでしばらくしてから、さまざまなトラブルに見舞われることになります。
よくあるケースは、次のような展開です。
• 床下や壁の中に結露ができやすく、気がつかないうちにカビが発生。家の木材が腐ってシロアリ被害に遭い、やむを得ず、殺虫剤を使用したり、建て直しを余儀なくされた。
• 高気密だが、換気システムのメンテナンス不良によるフィルターの目詰まりで十分な換気ができず、室内の空気が循環しにくい。空気がよどんで二酸化炭素濃度が異常に高くなって気分が悪くなったり、ハウスダストによるアレルギーに悩まされている。
• 断熱材や窓のサッシの性能が低いため、家の中の暖かい場所と肌寒い場所の差が激しい。そのためヒートショック問題が解消せず、冬につらい思いをしている。
• デザイン性を重視して各部屋の窓を広くとっているため、断熱性能が著しく悪い。
快適性と家族の健康のために高いお金をかけて高気密・高断熱住宅にしたというのに、住みづらさを感じて健康を害してしまっては本末転倒です。
どのようなシステムかを理解しないまま、高気密・高断熱という言葉を信じて家を建ててしまうと、思わぬ後悔や無用なトラブルを招いてしまうことになります。
2020年には、国が定めた省エネルギー基準が義務化され、高気密・高断熱の基準を満たさない新築物件は建てられなくなります。
しかし、家を建てる側がよく見極めないと、名ばかりの「健康住宅」「高気密・高断熱住宅」を高額で購入して泣きを見てしまうかもしれません。