「マルシチの家」の歩み
当社代表取締役会長 杉山義博の「家づくりへの想い」が1冊の本となり、幻冬舎より発売されています。
『“健康住宅”のウソ・ホント』
出版社名:幻冬舎メディアコンサルティング
発行年月:2018年7月
※amazonからもお求めいただけます
※本の内容を弊社ホームページにおいて、少しずつご紹介させていただいております
なぜ、私たちが現在ご提案している家づくりに行きついたのか?
丸七ホームが追求する「心地いい家」とはどんな家なのか?
それには、まず、私たちの家づくりの歩みを、知っていただきたいです。
そして、もし私たちの家づくりに興味をもっていただけたなら、ぜひモデルハウス「木楽」「ソラーナ」にてご体感いただきたいです。
それでは、丸七ホームの誕生から、私たちの家づくりの歩みをご紹介いたします。
丸七ホームの誕生
丸七ホームは、杉山切三郎氏(現会長の祖父)が1932(昭和7)年に7名で始めた岐阜県加茂郡白川町で設立した「合名会社丸七白川口製材所」をルーツとしています。同社は東濃ひのきの生産地という地の利を生かし、特に集成材を利用した住宅部材の製造販売業で成長していきます。その後、いくつかの会社に枝分かれしながら、1970(昭和45)年8月に「丸七建設株式会社」として誕生し、1989(平成元)年「丸七ホーム株式会社」に社名変更を行い、現在に至っています。
【丸七白川口製材所】
日本の住宅は間違っている
設立当時は、戸建住宅の設計・施工をメインとしながら、店舗等の内装や公共工事などを行っていました。そんな中、会社にとっての大きな転機を昭和61年に迎えます。それは、岐阜県可児市でのドイツ教会の新築工事でした。
お施主様であるドイツ人宣教師から「スパンを大きく飛ばした、木造の教会を建てたい」と、当時、構造用大断面集成材の製造をいち早く行っていた、創業のルーツを同じくする丸七住研工業株式会社(現・セブン工業株式会社)に問い合わせが入り、工事を当社が請け負うことになりました。
内装にはドイツの建材を用いたいとのご要望で、床材やパインの羽目板、室内建具、外部窓(木製サッシ)、システムキッチン、家具に至るまでドイツから輸入し、取り付けました。お施主様はとても建築に詳しい方で、ドイツの住まいや建築資材についてなど色々教えていただきました。
教会が完成し、お施主様からのお誘いもあり、訪独することになりました。ドイツで目の当たりにしたのは、「モノを大切にするという考え方」でした。
ドイツの人たちは、自分たちが住む家をとても大事にしています。どの家も、修繕して長く住むことを前提に建てられており、築50年以上のものも珍しくありません。一方、当時の日本はスクラップ&ビルドが当たり前。住宅の平均寿命も約27年と、とても短いものでした。
「日本の家づくりはどこか間違っている」そう強く疑問を抱くようになったのです。
【同盟福音基督教会可児キリスト教会】
ドイツからの学び ~システムキッチンの輸入~
教会の建築をきっかけに、ドイツとやり取りする中で、システムキッチンメーカー「ベッカーマン」に出会いました。1989(平成元)年に日本総代理店契約を行い、その後、定期的にドイツを訪れるようになりました。ドイツは冬の寒さが厳しい国で、緯度は北海道とほぼ同じに位置しています。寒い時期の航空券は、気候が穏やかな時と比較すると安かったため、訪独するタイミングはいつも冬でした。
この冬季の訪問で驚いたのは、日本より寒いドイツであるにもかかわらず、住まいの中に温度差がなく、日本よりも暖かく快適なことでした。しかも、築年数に関係ありません。
ドイツ人にとって住宅は、家族とのプライベートな時間を過ごす大切な空間。だからこそ、彼らは家の頑丈さと快適性にこだわり、自分自身で手入れしながら大切に住み続けるのです。その結果が省エネや環境保全にも繋がっていることに改めて気づかされました。ドイツ並みの快適な性能で、長年にわたり愛着を持ち続ける「心地のいい家」を日本でつくりたいと強く思いました。
また、システムキッチンから学ぶことも多くありました。キャビネットの背面や足元など、常に空気が通う「通気」の工夫がなされており、壁に密着しない取り付け方で結露が起きにくくしています。また、キャビネット内部についても同様の考えで、ドアが閉まった状態でも少し隙間があくようにすることで、キャビネット内部に湿気が溜まらないようになっていました。一方、日本のキッチンはというと虫が入らないようにドアにはパッキンが取り付けられ、キャビネット内部は密閉空間となっています。システムキッチンを輸入する際に、「パッキンを設けないと虫が入ってしまう」と指摘したところ、「虫が入るような家に住んでいるのか!それなら、虫が入らないように住まいをつくれば良い」と不思議な顔をされてしまいました。
このようにキッチン1つをとっても、日本とは考え方が大きく異なり、家づくりにも多くの刺激を受けました。
【吊戸棚背面にある通気スペース】
工法の模索 ~家が腐るという悲劇~
従来の家づくりの方法ではいけない。新しい工法の模索が始まりました。
ドイツでの経験から、住まいを快適にするには「断熱性能」と「気密性能」を良くすることだと思い、断熱材の選択から始めました。木の家に合った、木の良さを活かせる断熱材とは何か…。
グラスウールや硬質ウレタンフォーム、フェノールフォームなど、複数の断熱材を用いた試験を行うことになりました。自社やグループ会社の事務所・休憩室にそれらの断熱材を用いて、断熱性・気密性に問題がないか、快適なのかを実際の建物でテストしたのです。当然、窓にも同様な性能が求められるため、当時一般的に使われていたアルミサッシ(単板ガラス)ではなく、ドイツの木製サッシ(複層ガラス)を使用しました。
最初は快適に過ごしていましたが、1年も過ぎると室内はカビ臭く、不快な環境となってしまいました。そこで、壁の中がどうなっているのか見てみることになりました。
壁を取り除くと、目を疑うような状態に! 断熱材はびっしょりと濡れ、カビが発生していました。その時の衝撃は今でも忘れられません。
当時はまだ「計画換気」の概念はありませんでした。夏の冷房にはエアコン、冬の暖房には木材の廃材を利用した薪ストーブを使用し、乾燥を防ぐため、ストーブの上には常にやかんが置かれ、その蒸気で室内を加湿していました。このような状況下で、壁体内結露が発生してしまったのです。当然、濡れた断熱材はその本来の機能を果たすことができず、外の寒さを室内に伝えると同時に、ストーブで暖めた室内の熱を外に逃がしていました。更に、柱や土台などの構造材も濡れたままの状態となることで、カビが生え腐敗が進み、最後にはシロアリの絶好の住処となってしまう恐れさえありました。
この経験から、高気密・高断熱の住まいには、水を吸わない断熱材の使用、間違いのない断熱・気密施工、計画的な換気と工法に見合った冷暖房設備の選択が必要であると身をもって知りました。
「ソーラーサーキット」との出会いと別れ
水を吸わない断熱材はないかと探し始めた時、東京にある工務店を紹介されました。その工務店は、高気密・高断熱の家づくりをされており、吸水性の低い発泡ポリスチレンフォームの断熱材を使用した、外断熱・二重通気の「ソーラーサーキット工法」を採用されていました。
実際に東京へ出向き、水をほとんど吸わない断熱材を目の当たりにした時には、目から鱗が落ちる思いでした。この工法は特許工法で、鐘淵化学工業株式会社(現・株式会社カネカ)が全国展開をしていました。1996(平成8)年、“ソーラーサーキットの家”の会員工務店となり、外断熱・二重通気工法のノウハウを取得。1997(平成9)年には最初の1棟を建てさせていただき、現在の「マルシチの家」の礎が築かれることになりました。
その後、1999(平成11)年に1冊の本をきっかけとして、ソーラーサーキットの家を建てる全国有志の工務店が集まり、会員同士が協力、切磋琢磨してさらに「いい家」をつくろうという趣旨で“「いい家」をつくる会”が発足されました。家づくりに関する様々な情報を全国各地の工務店と共有する中で、安価でより良い商品があっても、ソーラーサーキット指定部材を使用せざるを得ず、お客様にお勧めできないということに矛盾を感じるようになってきました。その結果、2008(平成20)年に“ソーラーサーキットの家”を脱会することになりました。
そして2009(平成21)年、独自開発の次世代全館空調「マッハシステム」が国土交通省の「住宅・建築関連先導技術開発助成事業」に採択され、技術開発とその技術を用いた住宅への供給促進に向けての取り組みが始まりました。
「マルシチの家」の確立
“ソーラーサーキットの家”の脱会をきっかけに、自社ブランド「マルシチの家」を立ち上げました。
~「マルシチの家」の特徴~
① 木造軸組金物工法の構造
② 基礎から屋根までのオール外断熱
③ 余分な熱と湿気を排出する外側通気層&内側通気層(二重通気)
④ 薬剤を使用しない物理的防蟻処理
⑤ 第1種熱交換換気システムと壁掛エアコンを組み合わせた全館空調「マッハシステム」
「マルシチの家」はこれまでの経験を活かした、自信をもってお勧めできる自社ブランドです。残念ながら、考え方の相違から2010(平成22)年に“「いい家」をつくる会”を脱会せざるを得ませんでしたが、信念をもって「心地のいい家」づくりに取り組み、2012(平成24)年には全館空調「マッハシステム」の特許を取得しました(特許第5067769号、特許第5094894号)。
このシステムの研究開発を始めてから今年で13年目を迎えます。現在では国内60社以上のハウスメーカーや工務店に採用され、施工実績は1000棟を越えています。
百年続く「心地のいい家」へ
30年かけて、現在の「マルシチの家」にたどり着くまでには失敗も色々ありました。
向上心豊かな全国各地の工務店と切磋琢磨しながら、その時その時の最新の家づくりの知識を学び、この地域に見合った「住まいのカタチ(工法)」を模索し、つくり上げてきました。
そして今、一番こだわりを持って取り組んでいるのが、生活するうえで大切な「室内空気環境」です。「空気は目に見えない。だからこそ研究し、大切にする」という考え方のもと、現在もマッハシステムは進化し続けています。
私たちが提供する住まいは、決して安いものではありません。しかし、それに見合う性能と「安全は当たり前、さらにその上を行く快適な住み心地」という付加価値のある家だと自負しています。
「マルシチの家」が、お客様にとって真に心地よく、安心で、安全な住まいとなるよう、私たちは常に研究し続けます。