カーボンニュートラルの実現に向けた住まいづくり
近年の研究では、「人間活動の影響が大気、海洋及び陸域を温暖化させてきたことには疑う余地がない」と断言されています。実際に、産業革命が起きた18世紀半ばから19世紀に比べて、世界の平均気温は1℃程度上昇しています。
こうした中、世界各国は2015年のパリ協定において、『世界的な平均気温の上昇を、工業化以前に比べて2℃より十分低く保つと共に、1.5℃に抑える努力を追求すること(2.0℃目標、1.5℃努力目標)』に合意しました。さらにその後、気温上昇を約1.5℃に抑えるためには、2050年前後にCO2排出量を正味ゼロにする必要があるとされたことから、世界各国がその目標を達成すべく、地球温暖化対策の取組みを加速させています。
日本でも、2020年に 「2050年カーボンニュートラル」を宣言し、2021年には「2030年度(2013年比)46%減、さらに50%の高みに向けて挑戦」という新たな目標を掲げました。
▲「カーボンニュートラル」とは、温室効果ガスの排出量と吸収量を均衡させること
目標の実現に向けては、日本のエネルギー需要の約3割を占める住宅・建築物分野における省エネルギーの徹底を図ることが必要不可欠であり、様々な取組みが進められています。
脱炭素社会に向けた住宅・建築物の省エネ対策等のあり方検討会
2050年カーボンニュートラルの実現に向けた住宅・建築物におけるハード・ソフト両面の取組みと施策立案の方向性を幅広く議論するため、国土交通省・経済産業省・環境省の三省合同による「脱炭素社会に向けた住宅・建築物の省エネ対策等のあり方検討会」が、2021年4月に立ち上げられました。議論の結果、2050年及び2030年に目指すべき住宅・建築物の姿、住宅・建築物における省エネ対策の強化に係る取組みの進め方が、2021年8月の検討会においてとりまとめられました。
≪目指すべき住宅・建築物の姿≫
・2050年に住宅・建築物のストック平均で、ZEH・ZEB基準の水準の省エネルギー性能が確保されていること
・2030年度以降に新築される住宅・建築物について、ZEH・ZEB基準の水準の省エネルギー性能の確保を目指し、再エネ設備導入について、2030年に新築戸建住宅の6割において太陽光発電設備が導入されること
ZEH・ZEBとは?
ZEH(ゼッチ)はネット・ゼロ・エネルギー・ハウス、ZEB(ゼブ)はネット・ゼロ・エネルギー・ビルの略語。「建築物における一次エネルギー消費量を、建築物・設備の省エネ性能の向上、エネルギーの面的利用、オンサイトでの再生可能エネルギーの活用等により削減し、年間での一次エネルギー消費量が正味でゼロ又は概ねゼロとなる建築物」のことを言います。 |
≪住宅・建築物における省エネ対策の強化≫
・2025年度に住宅を含む省エネ基準への適合を義務化し、より高い省エネ性能の実現に向け、断熱性能に係る性能表示制度上の上位等級設定、住宅トップランナー制度の充実・強化等を図った上で、遅くとも2030年までに義務化基準をZEH基準の水準に引き上げること
これらは、同年10月に閣議決定された新たなエネルギー基本計画及び地球温暖化対策計画において、政府の取組方針としても位置付けられました。
「マルシチの家」は、断熱・省エネを標準装備でクリア
ZEHでは、高い「断熱」性能をベースに、高効率機器やHEMSによる「省エネ」、太陽光発電などによる「創エネ」を組み合わせることで、住宅の一次エネルギーの年間消費量が正味でおおむねゼロとします。
「マルシチの家」は基礎から屋根までのオール外断熱に、全館空調マッハシステムを組み合わせることによって、断熱・省エネを標準装備でクリアしています。つまり、エネルギー収支がおおむねゼロとなるように、創エネ設備である太陽光発電システムを組み合わせればZEHとすることができます。(屋根がどのようにかけられているかによって、太陽光の発電効率が変わるため、屋根の形状・面積・日射量などを考慮しながら、設計を進める必要があります)また、創った電気を蓄電池に保存し、夜間電力として使用すれば、さらに省エネな暮らしを実現できます。
既存住宅への省エネ・再エネ設備導入促進
私たちの日常生活において、世帯当たりに使用するエネルギーはこの半世紀の間に約1.8倍に増加しました。一方で、現行の省エネ基準を満たす住宅は、僅か1割程度に留まっています(2019年国土交通省調べ)。これらのことは、省エネの大きな可能性を秘めていることを示唆しています。
脱炭素社会の実現に向けても、2030年度の排出削減目標として、家庭部門では66%削減(2013年度比)が盛り込まれており、既存住宅への省エネ・再エネ設備導入を促進させる様々な取組が、国・地方自治体によって進められています。
国土交通省・経済産業省・環境省の3省連携による「住宅省エネ2023キャンペーン」もその1つ。住宅の断熱性の向上や高効率給湯器の導入等の住宅省エネ化を支援する3つの補助事業のことで、併用申請が可能です。補助対象の重複はできませんが、工事内容によっては、一般世帯で最大245万円、子育て・若者世帯では最大260万円が補助されます。
なお、すべての既存住宅への省エネ対策が対象となり、新築年度は問われません。そのため、暑い・寒い部屋がある、給湯器やトイレの調子が悪い、お風呂が汚れてきたなど、住まいの不調を感じている際は、この機会にリフォームをご検討いただくことがお勧めです。
補助金制度 | 工事内容 | 補助対象 | 補助額 |
先進的窓リノベ事業 (経済産業省・環境省) 予算1,000億円 |
高断熱窓の設置 | 窓ガラスの交換・内窓設置・カバー工法・外窓交換 | リフォーム工事内容に応じて 補助率1/2 上限200万円/戸 |
こどもエコ住まい支援事業 (国土交通省) 予算1,709億3,500万円※7月28日に209億3,500万円の予算が増額されました |
開口部・躯体等の省エネ改修工事 | ドア・窓の高断熱化、外壁・天井・床の断熱施工 | リフォーム工事内容に応じて
上限30万円/戸 ※世帯の条件によっては、上限額が45万円又は60万円に引き上げられます |
エコ住宅設備の設置 | 太陽熱利用システム・節水型トイレ・高断熱浴槽・高効率給湯器・節湯水栓・蓄電池の設置 | ||
その他の改修工事 | 子育て対応改修 防炎性向上改修 バリアフリー改修 高機能付きエアコン設置 |
||
給湯省エネ事業 (経済産業省) 予算300億円 |
高効率給湯器の設置 | 家庭用燃料電池(エネファーム)の設置 | 定額 15万円/台 |
ハイブリッド給湯器・エコキュートの設置 | 定額 5万円/台 |
※補助申請額が予算上限に達した時点で、受付終了となります
省エネな暮らしはメリットがたくさん
住宅の省エネ化は、カーボンニュートラルへの貢献だけでなく、私たちの実生活にもたくさんのメリットがあります。
①光熱費の削減
エネルギー消費の少ない省エネ住宅は、日頃の光熱費も安くなります。10年、20年と住み続けていくうちに、その差は広がっていくので、早めのリフォームがお得です。
②エネルギー価格高騰への対応
昨今の国際エネルギー市場の混乱や国際的な供給不安による、エネルギー価格の高騰への対策も必要です。危機に強いエネルギー供給体制の構築に向けて、家庭部門の省エネ化をより進めることが重要です。
▲電気代指数の動き ※出典:総務省消費者物価指数(2023年2月24日)
③結露を減らし、カビの発生を抑制
結露は、家の中の温度と外気の温度差が原因で発生します。高断熱の窓やドアは熱を伝えにくいため、サッシやガラスが冷たくなりにくく、結露の発生を抑えます。結露は、サッシ周りのカビの発生の原因になるだけではなく、木造住宅の木材を腐らせる原因にもなります。窓やドアの交換は、家族の健康や住宅を長持ちさせることにも役立ちます。
④ヒートショックなどのリスクを低減
冬季は高齢者による入浴事故リスクが増加する傾向にあり、高齢者の家庭内での溺死の死亡者数は高い水準で推移しています。2021年における入浴時の死亡者数は、交通事故死亡者数の約1.8倍であったことからも、住まいの中に温度差があることは非常に危険であると言えます。住まいの断熱性能を上げることで、家族の健康を守ります。